【初学者向け/遅すぎた構成要件の実現】

刑法

Xの投稿を転載しています。ご確認してください。

  • 遅すぎた構成要件の実現と早すぎた構成要件の実現とで混乱してしまう……
  • とりあえず論証を覚えたけれども、なぜそのように書くのかわからないで書いているから、どっちが一連一体の行為と書けばいいのかわからなくなることがある……

など、うまく整理できていない方は、こちらの投稿をリポスト・いいね・ブックマークをしてください。

いいね等があれば、解説動画を別途収録する予定です。

この論点を検討する際に大切なのは、

・行為の個数

をどのように捉えるのかということです。

私は、「入口の問題」というように表現することが多いのですが、ある行為に犯罪が成立するかどうかを考える入口の問題として、行為が複数ある場合に、一連の行為として一体的に評価するのか、それとも別個の行為として評価するのかという問題があります。

遅すぎた構成要件の実現に関して論述の手順を間違えてしまうのは、ある予備校の市販教材で、「全体を一個の行為とみて」という記載があるものがあるため、そこに引っ張られてしまい、現在の刑法の考え方からすれば一般的ではない考え方で理解してしまっている方がいらっしゃるようです(教材に関しては動画配信がされる場合に動画内で言及する予定です)。

例えば、

①被害者を死亡させるつもりで首を絞めたが、実は生存していた(加害者は死亡したと誤信している)

②死体を遺棄するつもりで生存していた被害者を埋めた

という事例について、①と②時間的場所的に近接していれば、「行為が一体である」と書きたくなるところです。

仮に、上記の事例が「①から1分後に犯行現場である自宅の庭に埋めた」という事例であれば、「行為が一体である」と書きたくなる人もいるのではないでしょうか。

しかし、行為が一個といえるかは、行為者の意思も踏まえて考える必要があります。①は殺人罪、②は死体遺棄の認識で行為に出ています。そうすると、例えば、①から1分後に犯行現場である自宅の庭に埋めたために、時間的場所的に近接していたとしても、意思の内容が全く異なるため、行為が一個ということはできません。

📗行為が一個といえるかどうかに関しては、刑法事例演習–メソッドから学ぶ・22頁以下の整理が参考になります。また、この論点に関する直接の解説は、基本刑法Ⅰ・116頁以下を参照してください。

上記のように、行為を別個として捉えるのであれば、それぞれの構成要件該当性を検討する必要があります。まず、②は死体遺棄罪の認識で殺人罪の結果を生じさせているため、抽象的事実の錯誤の問題が生じます。受験生が採用することが一般的である法定的符合説を前提にすると、故意犯にはならず、重過失致死罪が成立することになります。

一方、①の行為は、首を絞めているため殺人罪の実行行為を行っているといえます。そうすると、行為者自身の行為が介在しているが因果関係が認められるのか、ということを検討する必要があります。ここは因果関係の項目で学習すべき部分になりますが、条件関係があるかどうかを確認した上で、法的因果関係の有無を危険の現実化説に即して検討するのが一般的な思考過程だと思います。

法的因果関係を肯定することができた場合には、行為者が認識した因果経過と異なる因果経過により結果が生じていることから、因果関係の錯誤が故意を阻却するかを検討する必要があります。ここは問題になることを指摘した上で、現実の因果経過と認識した因果経過は、ともに法的因果関係の範囲内にあるので故意を阻却しないとして簡潔にまとめることになります。

あとは、罪数処理の問題が残りますが、②行為の過失致死罪が①の殺人罪に吸収されると処理するのが一般的です。

上記の罪数処理の前提として、第2行為の検討が抜けている答案があります。上記の思考プロセスからすれば、検討する必要があるので注意しましょう。

📗刑法演習サブノート210問・45頁は、「第1行為に殺人罪が成立すると解した場合、第2行為は正面から検討しなくてもよいか」という設問が用意されています。第2行為の評価をし忘れる答案も多いので、ぜひ確認してみてください。

この論点は、司法試験・予備試験でよく聞かれますが、上記の説明のとおり、処理すべき項目が多い論点です。そのため、「入口」である「行為の個数」の理解が不十分なまま学習を進めてしまっている方が多いように思います。この投稿を踏まえて、さらに理解を深めるようにしてください。

ここまで読んでいただき、「さらに解説動画が欲しい」という方は、いいね・リポスト・ブックマークをしてください。数が少ない場合は、この投稿で理解促進につながったと判断し、別途動画を作りません。

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